『妄虎千夜一夜物語』

 「妄想は忘れた頃にやってくる」
 「助っ人は忘れたほうが丁度いい」
<< July 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
Notice
シーズンが開幕して、リアルなタイガースの前にしばし妄想は霞んでしまうようです。 でも、そんな時も“妄想菌”はしっかり養分を蓄えているのです。いずれ訪れるかもしれない湿りっぱなしの季節に備えて、じわりじわりと……。

〜妄虎千夜一夜委員会〜

↓ご来館の足跡に赤ポチッと!
blogranking
Special Contents
Selected Entries
Recent Comment
Categories
Archives
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | - | - |
ラッキーセブン物語
イエロー「ヤッホー、ついに来たぞ甲子園球場」
ブルー 「テレビで見るより、すんげえでっかいじゃん」
オレンジ「カクテル光線に映える芝生の緑がとっても綺麗だわ」
ホワイト「いよいよ僕たちの甲子園デビューていう訳か」
レッド 「あーん、もう今からラッキー7が待ち遠しくてドキドキしちゃう」
イエロー「折角の俺たちの晴れ舞台だぜ。じっくり堪能しなくっちゃなあ」
レッド 「アタシ、イエローと一緒に甲子園デビュー出来ただけでも幸せ(はぁと)」
オレンジ「レッドったらもうアドレナリン全開ね」
ホワイト「リニューアルした甲子園でデビューだなんて僕達、ラッキーだよな」
レッド 「ええ、でもリニューアル前の甲子園がどんなだったか分かんないけどさあ」
ブルー 「ところでここはどこなの?」
イエロー「バーカ、甲子園球場だって何度も言ってるだろう」
ブルー 「じゃなくって客席がどこかって聞いてんの。一塁側とかライトスタンドとかさあ」
オレンジ「どうやらレフトスタンドみたいよ」
レッド 「きゃっはあー、レフトスタンドってアニキの背中が拝めるとこじゃん(うっとり)」
イエロー「おー最高じゃん。それこそ弾け甲斐があるってもんさ」
ホワイト「僕達どこの席に連れてこられるのか、その時になるまで分かんないもんね」
オレンジ「舞台は整ったってわけだ」
イエロー「俺、誰よりも高く舞い上がってやるぜ」
レッド 「イエロー、カッコイイ(はぁとぽっぽ)」


――僕の名前はホワイト。そして僕らは幼なじみの同級生五人組。今日、晴れて念願の甲子園デビューを果たしたのだった。そう、僕らはラッキー7に観客であるマスターにありったけの空気を詰め込まれてファンファーレと共に一斉に夜空に放たれるためにパッケージされた五本組のジェット風船なのだ。


ブルー 「あのさあ、今気付いたんだけど、おいらのマスターって4人家族だよね。それってもしかしてラッキー7においらにお呼びが掛かった時、この中の一人だけ置いてけぼりを喰らうことになるんじゃないのかなあ?」
ホワイト「うん、その可能性大だな。まあ、たいていの場合、ラッキー7にお呼びの掛からなかったジェット風船は9回裏の試合終了のどさくさに紛れてテキトーに飛ばされるって噂だから」
レッド 「えー、そんなのヤダー。アタシ、ラッキー7に大空を飛び立つことだけを夢見て今日まで生きてきたんだから……」
イエロー「俺だってそうさ。ずっと“ラッキー7”を合言葉にここまで来たんだぜ。それを今さら9回裏の試合終了時に追いやられるなんて絶対、納得いかねえなあ」
ブルー 「何、心配しなくてもイエロー、君だけは大丈夫さ。だって君は一番人気のタイガースカラーなんだから。ラッキー7には真っ先にマスターからお呼びが掛かるに決まってるさ」
レッド 「そうよイエロー。アンタをさて置いて他のカラーに先を越されるなんてありえないわ」
ブルー 「やっぱ、関西はタイガースカラーがハバ利かせているもんなあ。おいらの親類も名古屋じゃ羽振りがいいみたいだけど」
イエロー「モチ、俺だって心配してねえけどさあ……」
オレンジ「どうせとり残されるのは私に決まってるわ。だってオレンジ色はタイガースの天敵なんだもん」
ブルー 「うう、たしかに……」
オレンジ「オレンジ色が嫌われる運命だってことは生れ落ちた時、すでに証明済みなのよ。実は私の父はイエロー系、母はレッド系の血筋なの。普通、この組み合わせだと生まれてくる子供はイエローかレッドのいずれか。でも1万人に一人くらいの割合で稀に私のように混色で生れてくることがあるらしいのよ。お陰で先祖代々イエローの遺伝子を持つ父方の親族からは生れ落ちた私のカラーを見て不吉なことが起こる前兆とばかり、それはそれは忌み嫌ったらしいの。祖父なんか挙句の果てに露骨に関東方面に里子に出せと私の両親に強く迫ったらしいし。父と母が必至に抵抗して引き止めてくれたお陰で私は家を追い払われずに済んだんだけど」
イエロー「そりゃあ同情するけどさあ、でも俺ん家の家系だって同じことを言うに決まってるさ。もし俺がイエロー以外の子供を作ったとしたら、代々続くイエローの家系に泥を塗ったとばかり即、勘当もんさ」
レッド 「……イエローそんなこと言わないで。アタシ悲しくなるじゃん。それにイエローとレッドの組み合わせの場合、イエローが優性遺伝だって言うし……(どぎまぎ)」
オレンジ「両親のいずれとも違うカラーを持って生まれてくる子供の悲劇は、その本人しか分からないものよ。私、子供の頃から近所の子たちに『もらいっ子』とさげすまれ、いじめられてきたわ。そんな日はいつもベッドでこっそり涙してたものよ。でも私、そんな悲しみの表情を決して両親には見せなかったわ。だって私を守ってくれた両親に心配かけたくなかったもん。両親に嘘でも『やっぱり里子にだしたほうが良かったかなあ……』なんて思って欲しくなかったんだもん。こんな気持ち、みんなには分かってもらえないと思うけど」
ホワイト「その気持ち、僕には分かるさ。どんなカラーの組み合わせであれ、少ない確率ながらもアルビノ(先天性白皮症)つまり僕のようなホワイトが生まれる可能性はあるらしいんだ。僕は両親ともホワイト系同士なんでホワイトの僕が生まれたことは不思議でもなんでもないんだけれど、父さんの両親、つまり僕の父方の祖父母はグリーンとレッドだった」
オレンジ「偏狭なカラー主義者の主張がいかにナンセンスかってことね」
イエロー「ああ、俺は偏狭かもしんない。だけど俺はイエローにこだわりを持っていたいさ」
ホワイト「誰でも自分のカラーに執着するもんさ。そのこと自体は悪いことじゃない。問題なのは自分のカラーへの執着の気持ちじゃなくて他人のカラーに対する排他の念なのさ」
イエロー「わ、分かってるさ……」
レッド 「もう、みんなでイエローをいじめないでよ」
オレンジ「いじめてないよ」
レッド 「みんなイエローに嫉妬してるのよ。タイガースカラーだからって」
ホワイト「正直、それはあるかもしれない。嫉妬を生む構造がこの土地にはあるもんな」
イエロー「へへっ、俺って嫉妬を産む罪作りな奴なんだ……あはは」
ブルー 「オイラ生まれる土地を間違えたなあ」
オレンジ「私はそうは思わない」
ホワイト「そうさオレンジ。ジャイアンツカラーって悲観することは全然ないよ。オレンジカラーって子供にも女性にも人気あるんだし。きっとこの中で一人居残ることになるとしたら一番地味な僕さ」
イエロー「なら俺様の飛びっぷりをしっかり見届けてくれよ。誰にも負けない飛翔をみせるからよー」
ホワイト「うん、わかった」
イエロー「うちの父ちゃんがいつも言ってんだけど、近頃の若者はどうも頭でっかちに育っちまって推進力が足りない腰抜けばっかりだって。そもそもワシらジェット風船に必要なのは一途に舞い上がろうとする勇気と自尊心、それだけがあれば十分で、余計な知識は頭でっかちになるばかりで高く舞い上がるには邪魔でしかないって」
レッド 「そうよみんな男気がたりないのよ。その点、イエローは男気あるしスタイルグンバツ、理想的な紡錘形してるもん(はぁと)」
オレンジ「どうりでおつむもスリムなはずね……くくっ」
イエロー「そんな褒めちぎんなよ……」
オレンジ「……」


――頭でっかち。たしかに父さんの時代のアルバムを見ると、僕達はずいぶん頭でっかちな気がする。でも母さんは事あるごとに『いつまでもステロタイプなジェット風船でい続けても仕方ない』って言ってたなあ。『お前たちはもっともっと見聞を広めて本も沢山読んで、それで頭でっかちになったとしても恥ずかしいことでも何でもない』って。


ブルー 「おいらちゃんと飛べるかな?」
イエロー「何を弱気なこと言ってんだ。俺なんか成功イメージしかねえからよ」
レッド 「イエローのそのポジティブ思考がスキなのよね(らぶ)」
イエロー「絶対に一番高く飛んでやるぜ」
レッド 「イエローは校内でも身体能力ナンバー1だったもんね」
オレンジ「甘い甘い。世間は広いわよ、きっと」
ブルー 「ああ、イエローの身体能力が眩しいなあ」
ホワイト「高く飛ぶのはいいけどさあ、勢い余ってグラウンドに飛び込まないようにね」
イエロー「ああ、分かってるさ。神聖なグラウンドに足を踏み入れちゃいけないって先生言ってたもんな」
オレンジ「そうよ、それがジェット風船の矜持ってものよ」
イエロー「でも、そのことを意識するあまり低空飛行はしたかねえよ」
レッド 「そうよ、行っちゃった時は仕方ないわ」
オレンジ「ダメダメ。スタンドから飛び出すなんてみっともないことだわ。スタンドに着弾してこそ立派なジェット風船魂といえるのよ」
イエロー「矜持だの魂だのってそりゃあわかるけど、矜持と男気は相容れない部分があるんだよ。そいつが足かせで加減するような飛び方はしたかねえし、そっちのほうがみっともねえだろう。中には1ミリも飛び立つことなく破裂しちゃう奴みたいにもっとみっともないのもいるけどさ」
レッド 「あ、そういえばホワイトのお父さん、破裂したんじゃなかったっけ?」
ホワイト「う、うん、まあ……」
イエロー「こんなにもジェット風船があるんだから数%の不良品が混入しちゃうのは仕方ないって父ちゃん言ってたし」
オレンジ「あら、不良品とは何よ。粗忽で扱いがぞんざいなマスターが無茶に空気吹き込むからそうなるんでしょ!」
イエロー「ゴ、ゴメンよ……」
ホワイト「あ……いいんだ」
イエロー「でも、おれは少々無茶されても破裂しない自信はあるけどさあ」
レッド 「うんうん大丈夫!」
オレンジ「さあ、どうだか?」


――父さんの話題が出たとき「違うんだ」という言葉が出そうになって、ぐっとその言葉を飲み込んだ。確かに僕の父さんは晴れの舞台で飛び立つ直前、無念の破裂をしてしまった。ジェット風船にとって破裂以上の恥辱はない。確かに破裂は不可抗力の場合も少なくないのだが、不運も恥辱と同義で考える社会通念が僕らの社会には色濃かった。だから父さんの一件は何より僕たち家族に衝撃を与えたのだった。そのせいで母は職場を変わる羽目になり、妹は登校拒否に陥ってしまった。僕はといえばそれ以来、学校に行くのが地獄の苦しみに思えた。クラスのみんなと目をあわすことすら出来なくなってしまった。現実逃避して逃げ出したい衝動に何度も駆られる毎日だった。そんな塞ぎこんだ僕を救ってくれたのがオレンジの一言だった。ある日、そそくさと帰り支度する僕ににじり寄ってきた彼女は僕に向かってこう囁いた。『あなたのお父さんを惨めに思うことはないわ。あれは事故ではなく自尊心なのよ』。それだけを言うと彼女は走り去っていった。そのうしろ姿を目で追いながら彼女の意味不明な言葉を復唱した。そして、その言葉は何度も何度も僕の頭の中で空回りをはじめた。その言葉の反芻を繰り返すうちに、“ハッ”と僕は気付いたのだった。僕の父さんは見た目は華奢に見えるけれど、意外と体躯は頑強だった。ちょっとやそっとの空気で破裂するとは思えなかった。それに昔ながらの道徳観や品格を重んじる父さんはグラウンドに我われが足を踏み入れることを不徳の極みとする念が人一倍強かった。父にとって、グラウンドは決して足を踏み入れることの許されない“サンクチュアリ”な存在だったのかもしれない。聞いた話では父さんは、その時スタンドの最前列にいたんだとか。きっと無茶な空気を詰め込まれ膨らみすぎた父さんは、グラウンドに墜落することを阻止し抗う自信が持てたかったんじゃなかろうか。そんな状況でグラウンドに足を踏み入れまいとするには方法はただひとつ。父さんが選んだ道こそが、あの結果だった。そう考えるとすべてが腑に落ちた。オレンジが僕に示唆してくれたことの意味を、やっと僕は噛み締めることができた。そしたら僕の中に巣食っていた後ろめたさや折れそうな気持ちが、その日を境に霧消したのだった。それもこれもオレンジのあの一言のおかげだった。でも、人生最大のセレモニーを迎えようとするこのシチュエーションの中で、その話を口にするのは、とてもはばかられる気がした。結局、僕はその言葉を飲み込むことにしたのだった。



パパ「そろそろ秀太お待ちかねのラッキー7だぞ。ジェット風船の準備をしなくっちゃな」
秀太「パパー、まだ7回表ノーアウトだよ」
パパ「だから今から準備しとくんだよ。スリーアウトなんて下手すりゃ三球で終わっちゃうんだから。どれどれ秀太は何色のジェット風船がいい?」
秀太「ボク、黄色いのー」
パパ「タイガースカラーだもんな。じゃあ秀太は黄色。ミーちゃんが好きなのは赤色かな。ママは?」
ママ「ワタシ何でもいいよ。白以外なら」
パパ「それなら残っているのは青とオレンジだから、じゃあママは宿敵ジャイアンツのオレンジね。パパは落合ドラゴンズのブルーだ。コヤツらを目一杯膨らませて吹っ飛ばしちゃえ。そうすりゃライバルまとめて“ジェット風船”ならぬ“ジエンド風船”……なぁんちゃって……あはは……は?」
秀太「ママ、寒いよ〜」
ママ「パパ、ごちゃごちゃ言わずに早く私たち三人のジェット風船膨らませてよー」


レッド 「ところで今、何回なの?」
オレンジ「7回表よ」
レッド 「あらもうすぐじゃない」
イエロー「だんだんと胸が高鳴ってきたー」
ブルー 「ああ、ちびっちゃいそうだぁ〜」
レッド 「気持ち分かるけどさあ」
ブルー 「どこでフィニッシュするんだっけ?」
イエロー「お前、学校でナニ習ってきたんだよ。いいか、7回表が終了したらトランペットのファンファーレが30秒流れるから、それが終わって場内アナウンスの『タイガースファンの皆様、尚一層ご声援くださいませ』が流れるタイミングで一気に飛び立つんだよ」
レッド 「そうよ、何度も学校で予行演習したじゃん」
ホワイト「何だか数千キロも海を渡って、故郷の川を上り、死と引きかえに産卵をする鮭の心境が分かる気がしてきた。彼等が卵と精子を射出するように、僕らはありったけのリビドーを射出して天に召されるんだ」
イエロー「そんな小難しいこと言ってんじゃねえよ。みんな心の準備はいいか?」
レッド 「アイム・レディー!」
ブルー 「おいら、もう頭ん中真っ白になりそう」
オレンジ「本当はうれしい筈なのに涙が湧いてくるのは何故?」
ホワイト「それが素直な気持ちなんだよ」
オレンジ「私、何だか恐い」
ホワイト「みんなそうさ」
レッド 「何言ってんのよ。その瞬間ってこの世の頂点のエクスタシーって言うじゃない」
イエロー「だからこそ、俺たちはこの日を待ち望んでいたんじゃないか」
ブルー 「おいら、もうビンビンだ」
ホワイト「やっぱり僕が居残っちゃった」
オレンジ「あなたと一緒に行けないのが残念」
ホワイト「いいさ、みんなを見届けて後から追っていくよ」

CIMG1848

♪ パンーパパパーパーパーパパーパパーパーパーー……

ブルー 「ファンファーレが始まった」
レッド 「ファンファーレの鼓動に合わせて魂が振動し始めた。こんな気持ち初めてだわ。めくるめく官能のバイブレーションってやつ?」
イエロー「話には聞いていたけど、この高揚感は想像以上だ」
レッド 「アタシ、生まれてきてよかった」
ブルー 「ああ、おいらもう辛抱たまらなくなってきた」
オレンジ「何言ってんの、フライングしちゃダメよ。ファンファーレが鳴り止むまで辛抱すんのよ」
ブルー 「ダメだおいら、もう行っちゃう〜。ゴメンよお先に……あれ〜」
レッド 「あっ、まだ鳴り止まないのにブルーが逝っちゃった」
オレンジ「あの子、子供ん時から辛抱が足りない子だったわ」
イエロー「さ、いよいよカウントダウンだ」
ホワイト「みんな、僕はここでしっかり見届けてるからさあ」
イエロー「ホワイト、俺の飛翔の軌跡を目に焼き付けてくれよ。そんでもって、もしももしも誰かに話す機会があったなら俺の雄姿を伝えてくれ」
ホワイト「ああ、話す機会があったらね」
オレンジ「ホワイト、私のこともお願いしっかり見届けてね。私、わたしさあ……」
ホワイト「え?何?何んなの?」
オレンジ「私、ずっと……」


「タイガースラッキー7でございます。タイガースファンの皆様、尚一層ご声援くださいませ」


イエロー「よし今だ、ソレ!」
レッド 「待ってよイエロー、アタイを置いてかないで〜」
オレンジ「さよならホワイト。私待ってるから……」



フューーー フューーー フューーー



――そして誰もいなくなった。
魂放たれし亡骸だけが桜吹雪の如くしんしんと、ただしんしんと、スタンド、そしてグラウンドに祭りのあとの寂寥感がかさぶたとなって静かに降り積もっていった。
僕はそれを見つめながら、しばらく息を止めてみた。そして息苦しくなって、また呼吸を再開した。さっきまで一緒にいたみんなの息吹を懐かしむように。

――イエローはさすがに見事な舞いを見せてくれた。僕らの仲間のなかでは図抜けた飛びっぷりだった。ただ、あまりに勢いがつき過ぎたため、そのままグラウンドになだれ込んでしまったようだ。そのあとを追うようにレッドもグラウンドに飛び込んでいくところもしっかり見届けることができた。ただ、残念ながらオレンジを最後まで見届けることは出来なかった。途中で見失ってしまったのだ。でもきっと僕の近くに舞い降りたんだろう気がしている。ただ今となっては知る術もないが。今、オレンジを失ってみて、初めて気付いたことがある。僕を救ってくれたオレンジに対する“恩義”に近いような感情は、実は僕の思い違いだったのではないかって。“恩義”などという貸し借りできるような代物ではなく、もっと無垢で見返りを求めない感情。それを世間では“恋心”と呼ぶのだろう。やっと今、そのことに気付いた。そして、オレンジの僕に対する好意の念も今、初めて気付いた。なんて僕は間抜けな大馬鹿野郎なんだろう。そういえば僕らのパッケージが決まった日、下校途中、オレンジと偶然ばったりと出くわしたっけ。そして一緒にパッケージされたことをよろこび、ガストに寄って二人っきりでプチお祝いをしたっけ。あの時、彼女はやたらとテンションが高かったのを覚えている。その時は単にパッケージが決まったことのよろこびと、クラス一の人気者で女生徒の憧れの的だったイエローと一緒になったことにテンション上げてるんだとばかり思っていた。でも、今振り返ってみれば彼女の帰宅の方向は僕と真逆で、そもそもあんなところで鉢合わせすることはありえない。彼女のあのハイテンションの理由のひとつに僕の存在が大きく関わっていたであろうことを今、はっきりと確信した。そして僕も彼女と一緒にいることの心地良さの正体=“恋心”に、その時、気付くべきだったんだ。

――すっかりと整備されたグラウンドを見ていると、日頃、僕が漠然と感じている不条理さの正体が、すこしだけ分かった気がした。僕らは何故一度きりの使命しか与えられないんだろう。今まで誰もそのことに疑問を抱くものはいなかった。いや、抱いたとしてもそんな疑問は、無意識の中の基底感覚に掻き消されてしまっていた。そもそもこんな疑問を誰も彼もが持ち出したら、ジェット風船の使命たるや、たちまちのうちに立ち行かなくなってしまうだろう。だからこのことは誰も触れてはいけないんだ。そのことが基底感覚となって僕らの世界観をどんどんと画一化していったのだ。かつて父さんたちが過ごした高度成長期、誰もが薔薇色の未来をイメージしていた時代だった。今、僕らの時代に薔薇色の未来を想像できる者はいない。希望も展望も見出せない若者が明日を見失っている時代、僕らジェット風船のように画一化した分かりやすい使命に幸福を重ね合わせられるということは、ある意味幸せなことなんだと大人達は口を揃える。それも一理あるかもしれない。そのまま知らず、疑問に思わず、ただ使命達成のよろこびだけを人生の価値にすえ続けることができたなら、いつまでもその幸福を享受できたかもしれない。でも、僕らは知ってしまったんだ。幸福のからくりを。いつも母さんの口癖だった『消費型の社会は二十世紀で終わり、これからは循環型の社会であらねばならないのよ』という言葉が今、僕の胸に突き刺してきた。なんでも世の中には「ビーチボール」という空気を入れては使い抜いてたたみ、何度も繰り返し利用できる風船があるらしい。生産、回収、再利用、再生産がしっかりと組み込まれた循環型の社会とは、きっとそういうもので溢れているのだろう。古い価値観を大切にする父さんも、母さんのそんな話ばかりは肯定もしないが決して否定もしなかった。「ビーチボール」の話だって父さんが初めてしてくれた。きっと父さんも、心の中では古い価値観は自分の世代で封印して、新しい価値観に根ざした世代の出現を期待してたんじゃなかろうか。確信とまでは言い切れないけれど、そんな気がしてるんだ。



パパ「さあ、球児がツーアウト取ったぞ。あと一人。そうだ白いジェット風船がひとつ残ってたな」
秀太「パパー、ボクがふくらましたい」
パパ「秀太できるか?よしやってみなさい」
秀太「うん、たくさん飛ぶようにいっぱいふくらませるね。フーッ、フーッ……」


――いよいよ僕の出番がやってきた。9回裏に飛ばされるジェット風船というのも侘しいな。どうせなら僕もラッキー7が良かったな……っと、しかしこの小僧、手荒い膨らませかたをしやがる。おいおい優しく頼むよ。もうそろそろこんなもんでいいんじゃない。もうこれくらいにしとけよ。おいおいもう十分膨らんだぞ。え、まだ入れるつもりか、この小僧は。だめだめ破裂しちゃうじゃないか。もうそれくらいにしてくれよ……あー無茶するなって、おい……。


秀太「わービックリした。パパー、今度は破裂しないやつ買ってね」


<完>




| いわほー | 妄想 | comments(1) | trackbacks(277) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜憂いなし?〜
○横浜6−1阪神● (阪神13勝9敗)

神宮、横浜の関東遠征は1勝もできずに、よもやの7連敗を喫したタイガース。
明日から甲子園に戻って中日と2位をかけた三連戦。
ロッカールームには、いつものように捕手三人が肩を並べて……。

かのっち「矢野さん、ほんとにこんな感じで負けてていいんですか?」
やのっち「ああ、ええ感じや」
かのっち「ええ感じって、何か釈然としないんですが」
やのっち「これでええんや。すべて予定通り」
のぐっち「これで嶋田コーチ、喜んでくれますかね?」
やのっち「昨日もサヨナラ負けしたあと、喜色満面やったで」
かのっち「そ、そんなあ。一体、何のために……」
やのっち「ジブン、勘にぶいなあ。すでにクライマックスシリーズに向けての情報戦ははじまってるんやで」
かのっち「はあ、そうなんすか……」
のぐっち「それもこれも、すべてクラシリ対策。聞くところ岡田監督直々に全コーチに作戦が告げられたらしいで。名づけて『死んだ振り作戦』ちゅうらしいわ」
やのっち「そのネーミングも岡田監督らしいし」
のぐっち「もうすこし、ましな名前つけられんか?」
やのっち「ほんまになあ(冷笑)」
のぐっち「ぐふっふ(冷笑)。それにしても試合後の岡田監督、名演技ですね」
かのっち「そんなんありっすか?たとえ不利な状況に瀕しても、正々堂々とガチで力勝負するのがプロなんじゃありませんか?ねえねえ、違いますか?」
やのっち「うーん狩野ちゃん、『カリッと青春、グリコアーモンドチョコレート』は今どき、はやらんのとちゃうか?」
のぐっち「矢野さん、『グリコアーモンドチョコレート』の例えも今どき、はやらんのとちゃいますか?」
やのっち「そうか?グリコアーモンドチョコレートとカバヤのジューCは遠足で絶対はずせんかったけどなあ」
のぐっち「都こんぶも忘れんといてください」
かのっち「うわーん、こんなオヤジ大っキライだ!」

                           ◇

かのっち「ところで矢野さん、さっきから手に持ってる雑誌、『マンスリーよしもと』って書いてますけど?」
やのっち「あっ、これか?いやなあ、そろそろネタを仕込んどかんとと思ってなあ(笑)」
のぐっち「ネタって?」
やのっち「優勝のビール掛けの時のコスチュームやんか」
のぐっち「わー、もうそこに飛んじゃってる」
やのっち「こんなんは早いうちから準備しとかんとなあ」
のぐっち「ってエラハヤですやん」
かのっち「『備えあればお礼なし』ですね」
やのっち「なんやそれ、“お礼なし”って?」
かのっち「違いましたっけ?」
のぐっち「それも言うなら『備えあればうれし泣き』やん」
かのっち「そうそう、それそれ」
やのっち「ジブンら、エエ加減にしいや。“うれし泣き”も聞いたことないわ」
のぐっち「え?うちの地元じゃ、そう言うんですが」
かのっち「じゃあ、矢野さん。本当は何ていうんですか?」
やのっち「……え?何、いやそのなあ(汗)」
かのっち「矢野さんも知らないん違います?」
やのっち「アホ、わかっとるわ。『備えあれば……う、う、うりわり霊園』」
かのっち「なんです?その『うりわりれいえん』って?」
やのっち「うちの地元じゃ、みんなそう言うの!嘘やと思うんやったら地下鉄谷町線の喜連瓜破駅で出口調査してみいや(怒)」
のぐっち「誰がしまっかいな」
かのっち「ねえねえ本当のこと教えてくださいよ〜。矢野さん物知りなんですから」
やのっち「物知り言われても……そないおれはうれしない」
のぐっち「あっ、それですよ。『そないおれはうれしない』」
かのっち「ええ?それが正しいんですか?」
のぐっち「阿呆、矢野さんが言うんやから正しいに決まっとるやないか。な、な、な……」
かのっち「は、はい(汗)。なんかそんな気がしてきました。『そないおれはうれしない』というのが」
のぐっち「そうそうそれそれ。さすが矢野さん。ささ、話題変えようや(汗)」
かのっち「ええ、そりゃもう(汗)。あはは……」
やのっち「……」

                           ◇

かのっち「マンスリーよしもとに、何かいいコスチュームでも載ってましたか?」
やのっち「うん、ひとつあんねんけど。こんなんどないや?」
かのっち「ひえーっ、これタムケンですやん。裸でフンドシですよ。矢野さん、そんなカッコでブラウン管の前に現れたら全国のやのっちファン、卒倒しますよ」
やのっち「んん、誰がおれのコスチューム言うたんや?」
かのっち「え?」
のぐっち「おー、こういう格好は若手に限るよなあ。ふふふ……」
かのっち「えぇぇ(汗)。まさかそいつをボクが……」
やのっち「ジブン、エエ読みしてるやん。なんちゅうてもキャッチャーは読みが肝心や」
のぐっち「次代の正捕手は決定やなあ」
かのっち「そんな褒め方されても……」
やのっち「よし、さっそくコスチューム注文しとこか」
かのっち「えーっ、そんなあ。これでも妻子もちですよ、ボク」
のぐっち「全国に顔と名前を売るチャンスやないかい」
かのっち「そんなんで顔、売りたかありません」
やのっち「早うに押さえとかんと、赤星、ひーやんに先、持ってかれるで」
かのっち「持ってってもらって結構です(キッパリ)」
やのっち「そうと決まったら……」
かのっち「何が決まったんですか?」
やのっち「……衣装はオレが手配しておくから心配するな」
のぐっち「衣装代は矢野さんがもってくれるっちゅうんやで。お礼言うときや」
かのっち「オラやだやだー……(涙)」

                           ◇

おかぼん「おい、嶋田コーチ。あいつら、また何を騒いどんねん?」
しまだっち「あっ、監督。なんでも優勝のビール掛けのときのコスチュームがどうのこうのっちゅうてますねん」
おかぼん「アホか。寝言は寝てから言えっちゅうねん」
しまだっち「いや、ほんまにそのとおりです」
おかぼん「ところでコーチ、例のやつ準備しといてや」
しまだっち「例の……?。ああ、そりゃもう大丈夫です。実はこないだ、いいやつを手に入れましてねえ」
おかぼん「いいやつって?」
しまだっち「私も知らなかったんですが、最近のはテープだのDVDディスクだのと違うんですね。こんな切手みたいなやつに記録するらしいんです」
おかぼん「おお、SDメモリーとかいうやつやろ」
しまだっち「それそれそれです。それに記録するやつで小さくて高性能な新型のビデオカメラ、買っておきましたから」
おかぼん「そらええなあ。ほな当日しっかり頼むで」
しまだっち「はい。任せてください。優勝祝賀パーティーの席上で監督が挨拶しているとき、しっかり正面からビデオ構えておきますから」
おかぼん「しっかり証拠をビデオに収めといてくれよ」
しまだっち「今度こそ監督に向かって『オカダ〜』と呼び捨てしたやつの証拠ビデオを……」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜ぞのぐっちデー〜
○阪神3−2横浜● (阪神12勝6敗)

横浜のゆる〜い守備にも助けられての6連勝。
中日を抜いてついについにの二位に躍進。
いよいよ首位も射程距離に捉えた夜、
ロッカールームには、いつものように捕手三人が肩を並べて……。

かのっち「週一妻の“ぞのぐっちデー”お疲れ様です」
のぐっち「そんなん言われたらこれから“ぞのぐっちデー”は饅頭、配ってまわらんといかんなあ(笑)」
かのっち「今日の上園のリードは表彰状ものですね。だましだましで、よう1点にしのいだもんです。金もっさんの好返球にナイスブロックの好プレーもありましたけど」
のぐっち「おお見てくれた?あの本塁アウトのシーン、こんどDVDに焼いて持ってきたろか?」
かのっち「あ、いえ、そこまでしてもらわなくても……」
のぐっち「ジブン遠慮せんでもええで。どうせ100枚くらい焼くつもりやから」
かのっち「あ、そうなんですか(汗;)」
やのっち「饅頭は上用のおまんにしてや」
のぐっち「あっ、突然、時間差口撃ですか?」
やのっち「そのDVD、オレにも分けてくれへん?」
のぐっち「あ、あれは冗談なんですが……(汗)」
やのっち「お、おれも冗談なんですが……(笑)」
かのっち「ど、どれも冗談なんですか……(泣)」

かのっち「今日のお立ち台、のぐっさんやと思ってました」
のぐっち「うんうん、試合終了のあとベンチでドキドキしながら身支度してたんやけどなあ、ワシ(笑)」
やのっち「そういやあ、まだ今シーズンは“39トリオ”のお立ち台も実現してへんからなあ」
かのっち「“JFK”揃い踏みもまだちゃいます?」
やのっち「なかなか三人揃ってっちゅうのは難しいよなあ」
のぐっち「我々、捕手三人組みのお立ち台というのはどないです?」
かのっち「それいいですね。やのっち、かのっち、のぐっちで“ぐっち三兄弟”とかなんとかの見出しになりそうですね」
やのっち「ありえへん。そもそも捕手は必ずスペア一人を温存する監督やからなあ」
かのっち「ですよねえ。どう考えても“ぐっち三兄弟”は幻に終わりそうですよねえ」
のぐっち「いや、9月はハードな戦いが続きそうだし、総力戦になりそうやから分からんよ」
かのっち「そーっすよね。あるかもしれませんよね」
やのっち「どっちやねんジブン。もし、そうなったらお立ち台の並びはどうする?」
のぐっち「そら、矢野さんが真ん中ですね」
かのっち「じゃあ、三番目は誰が行くんですか?」
のぐっち「ジブン行けや」
かのっち「えーっ、僕、そんな上手いオチいえませんよ……」
のぐっち「阿呆、なんもオチ言う場やないぞ」
やのっち「いや、三人寄ったら三番目が落とさんと関西人は許してくれへんで」
かのっち「そ、そんなあ……」
やのっち「よし、オレが三番目いくわ」
のぐっち「さすが矢野さん、関西人の血が騒ぐんですか(笑)」
やのっち「一番おいしいとこやんか」
かのっち「あ、じゃあやっぱりボク行きます」
のぐっち「いや、それならこのところ好感度急上昇のワシがぜひ!」
やのっち「いややいやや。瓜破で鍛えられたオレのボケしか務まらんの!」
かのっち「矢野さん、そんなん独り占めや……」
のぐっち「ここは後輩たちに任せてもらって……」



おかぼん「嶋田コーチ、向こうで何、騒いどんねん?」
しまだっち「あ、何でもあの三人がお立ち台に立ったときの並ぶ順番でもめてるみたいです」
おかぼん「なんやそれ。オレの目の黒いうちはありえへん。そない言うとったれ」
しまだっち「は、はい……」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち
タイガースの投手陣を預かるは、嶋田コーチ率いる虎の捕手軍団。
虎の「三本の矢」、やのっち、かのっち、のぐっちとは俺等のことよ。
さあさ、どこなとかかって来なさい!

Contents

 2007-04-28 〜二人はなかよし〜 
 2007-04-29 〜二人はなかよし パート2〜 
 2007-04-30 〜二人はやけくそ〜 
 2007-05-05 〜二人はぶつめつ〜 
 2007-05-13 〜ローテーション〜 
 2007-05-16 〜雨中徘徊〜 
 2007-06-16 〜リターンズ〜 
 2007-07-01 〜横浜バースデーズ〜 
 2007-07-14 〜内紛勃発〜 
 2007-08-18 〜猛暑完封劇〜 
 2007-08-25 〜ナゴド勝ち越し〜 
 2007-09-05 〜ぞのぐっちデー〜 
 2007-09-26 〜憂いなし?〜
| いわほー | 妄想 | comments(37) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜ナゴド勝ち越し〜 2007-8-25
●中日0−2阪神○ (阪神10勝7敗1分)

二戦連続8−1のスコアで連敗して迎えたナゴドの第二戦。
去年までのナゴドの呪縛が微かによぎったその試合。
息詰まる投手戦を辛くも0−2で制して、ナゴドのシーズン勝ち越しを決めた夜。
意気が上がるタイガースのロッカールームには、いつものように捕手三人が肩を並べて……。

かのっち「矢野さん、監督エライお怒りらしいっすよ」
やのっち「え?なんで?試合に勝ったのに」
のぐっち「うん、ワシも嶋田コーチから聞いたんやけど、8回無死三塁の三者三振の件やろ」
やのっち「ああ、あそこのことにこだわっとるんかいな“虎キチ監督”は(笑)」
かのっち「矢野さん、関本さん、僕の三人連続バットにカスリもしませんでしたからね」
のぐっち「『はじめて見たわ、ノーアウト三塁でボールが前に飛ばへんのは……』とか、言うとったらしいね」
やのっち「そない言うても今日の小笠原はめちゃめちゃ良かったからなあ。15三振やろ?そのうちのみっつはオレやけどな」
のぐっち「今日はワシ、待機組で正解。出てても当たる気せんかったもんなあ」
かのっち「どうせなら関本さんのところにのぐっさんがDHで出て、『やのっちかのっちのぐっち〜三人揃ってだるまっちっち〜』というのも面白かったっすねえ(笑)」
やのっち「阿呆、そんなことしたら嶋田コーチ、頭まるめんといかんようになるがな」
のぐっち「喜ぶのはネタができたっちゅう『ブログ書き』だけやろ」
やのっち「ジャンの一件があったからか、ボーグルソンも気合入ってたなあ。エエ球きとったわ」
かのっち「ボーの奥さんも『マイダーリンはハードファッカー。つい頑張りすぎてしまうところがある』ちゅうてましたからねえ」
のぐっち「えっ、今何言うた?何を頑張りすぎるって?それも言うなら『ハードワーカー』の間違いちがう?」
かのっち「あ、確かそんなんやった思います(汗;)」
のぐっち「一瞬、耳、疑ったやんジブン。……まあ、ジャンとボーは性格、真逆なタイプかもなあ」
やのっち「あの二人、名前も真逆やったら笑うよなあ」
のぐっち「何でです?」
やのっち「ジャンが『ボークる損』やで。一面の見出しはコレで決まりやん」
のぐっち「それ、使えまんなあ(笑)」
かのっち「そういえばジャンはどうしてるんでしょうねえ?」
のぐっち「ドミニカに帰りたい言うとるそうやね」
かのっち「あの危険球は言い訳できないっすからねえ」
やのっち「あいつなあ、オレのサインどおりに投げただけや言うんや」
のぐっち「え?危険球ってサインありましたっけ?」
やのっち「あるかいな、そんなもん!」
かのっち「僕もそんなサイン知りませんもん」
やのっち「指一本がストレート、二本がスライダー、三本がフォークの三つしかアイツには教えてへんねんで」
のぐっち「もしかして矢野さん、指一本のストレートの時、中指立てませんでした?」
やのっち「ん?たまにオレ、人差し指の代わりに中指でストレート出すときあるよ」
のぐっち「そんでもって、手の甲をピッチャーに向けて上を指さしたりしませんでした?」
やのっち「そんなんするかいな……。あっ!あの時たしか右手の甲のあたりに蚊が止まりよってなあ、地面に甲をこすり付けて追い払ったんや」
のぐっち「こんなふうにですか?」
やのっち「うんうんそうそう」
かのっち「矢野さん、それって外国人に喧嘩うってますよ。『Fuck You!』ちゅうて」
やのっち「あっ、そうなんや(汗;)」
のぐっち「……」
かのっち「……」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜猛暑完封劇〜 2007-8-18
○阪神6−0広島● (阪神7勝9敗)

猛暑が続くお盆の日本列島。
唯一、負け越している広島カープを京セラドームに迎えての連勝。
意気が上がるタイガースのロッカールームには、いつものように捕手三人が肩を並べて……。

かのっち「のぐっさん、若旦那の完封リードはお見事です」
のぐっち「おおきにありがとさ〜ん」
かのっち「うわーっ、いつからそんな“関西人”化したんですか?」
のぐっち「阿呆、ワシもタイガースに来て5シーズン目やで。イヤでもこないなるがな」
やのっち「イヤでもってイヤなんかい!」
かのっち「間髪入れぬコンマ2秒のそのツッコミ。さすがネイティブ関西人」
のぐっち「この間合いだけは真似できませんわ」
やのっち「そらオレ等、小学校の三年までにボケ方習って、高学年では徹底的にツッコミの集中指導受けさせられるからなあ。ノリの悪いやつは夏休みに“補習”もあるし」
かのっち「え〜っ、大阪の学習指導要領にそんなんあるんですか?」
やのっち「嘘やがな(笑)」
かのっち「……」
のぐっち「なんや、ジブン本気にしたんかいな?(笑)」
かのっち「いえ、大阪ならありそだなあと……」
やのっち「いや、あくまで希望者だけやけどな」
のぐっち「え〜っ、やっぱりそんな教室あるんですか?」
やのっち「嘘やがな(笑)」
のぐっち「……」

かのっち「それにしても、のぐっさんのお立ち台、なかなかよかったっすよ。『たまにしかでないジブンに大きな声援をありがとうございます……』のあのセリフ。腕上げましたなあ。またあれで隠れ野口ファンのハート鷲掴みですよ(笑)」
のぐっち「野口ファンは隠れとるんかいな。ワシ、あれで遠慮ぎみに言うたつもりやのに監督まで『一週間に1回の出番……』って念押しせんでもええやん。一応、週二三回の出番は心づもりしとんのに」
かのっち「週一言うてもらえるだけでもいいじゃないですか。僕には“有事”という言葉しかありませんから」
やのっち「まあまあ。オレら三人が力合わせて投手陣預かってるんやし」
のぐっち「矢野さん、本当にそう思ってる?」
かのっち「だんだん嶋田コーチとかぶってきましたで」
やのっち「そ、そうか?」
のぐっち「この前、飲み屋で嶋田コーチがエライ心配してましたわ。『矢野が現役あと何年続けられるんやろう?』って」
やのっち「そうか。嶋田コーチもいろいろ心配してくれてるんやなあ」
かのっち「いえいえなんの。矢野さんが引退したときの自分の居場所を心配してはったんです」
のぐっち「うん、そうそう」
やのっち「あっそう……」

やのっち「それにしても夏い暑よのう」
かのっち「矢野さん、それも言うなら“暑い夏”ですよ。ホンマ、疲れるわぁこのおっさん(笑)」
やのっち「ま、ま、お約束やんか」
かのっち「そんな関西人だけのお約束、僕らは知りません!」
やのっち「冷たいなあジブン。それにしても今年の夏は暑いよなあ。この時期、ホンマにドーム6連戦がありがたいわ。営業部の大町課長に感謝しとかんといかんなあ」
のぐっち「そうそう。ドームが一番ドームが一番。クーラー、枝豆、生ビールっと」
かのっち「先輩、何をそのへんのオッサンみたいなこと言うんですか?曲がりなりにも僕ら甲子園を本拠地とするタイガースの一員ですよ」
やのっち「ほなジブン、この炎天下のオープンカフェとクーラーぎんぎんの日陰のカフェがあったらどっち入る?」
かのっち「えっ?そらぁまあ……」
やのっち「やろう。寒い分には体を動かせばどないかなるけど、暑いのだけはどんならんもんなあ」
のぐっち「そうそう。炎天下、砂と汗にまみれる青春時代は、すでに過去のアルバムの1ページよ」
かのっち「三十代半ばで今のいま、鳴尾浜で砂と汗にまみれてる青春真っ只中の先輩、ひとり僕知ってますけどね」
やのっち「あっ、その 変態的 話題は監督の前じゃタブーやからなあ」
のぐっち「うっかり口すべらせた庄田が次の日、鳴尾浜行きになったっちゅう噂やし」
かのっち「えーっ、そうやったんすか?」
やのっち「ジブンも気ぃつけや」
のぐっち「ウッス……(汗;)」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜内紛勃発〜 2007-7-14
阪神−中日戦は二日続けて雨天中止。
軽いめの練習で、選手が早々に引き上げはじめたロッカールーム。
いつものように捕手三人が肩を並べて……。

かのっち「かねもっさん、半月板損傷なんですって?」
のぐっち「ワシも今日知ったんや」
かのっち「そんなんで何で野球ができるんですか?」
のぐっち「そんなもんこっちが聞きたいわ」
やのっち「あれなあ、痛みが出ると二週間くらい続くらしいからなあ」
かのっち「へえ、そうなんですか?」
やのっち「ああ、半月痛っ(板)ちゅうてなあ……あはは(汗;)」
かのっち「……」
のぐっち「……」

やのっち「ほんま、恵みの雨やなあ」
のぐっち「かねもっさんとJFKが一番喜んでるんちゃいますか」
かのっち「そういうのぐっさんも、ニヤけてますよ」
やのっち「ま、この時期、ベテランには雨はありがたいわ。けど二日間も空くとナマるよなあ」
かのっち「僕、十分ナマってます」
のぐっち「うん、ジブンちょっと訛っとるよなあ。たしか群馬やったっけ」
かのっち「そういうこと言うてるんじゃないっす」
やのっち「雨で中止が続くと先発投手の調整が難しいんよなあ」
かのっち「二日、スライドしましたからね」
やのっち「試合あったらファン待望の“シモヤノコンビ”やったのになあ」
かのっち「“ファン待望”って……矢野さぁん、ジブンで言いますか(笑)」
やのっち「ちゃうんや、教えたろか?。あんなあ、ふたりはスライドやで。ふたりはスライド、ふたりはスライド、ふはスライド、ふわすらいど、ふわらいどう、付和雷同……。ばんざーいばんざーい」
かのっち「……フワライドって?」
のぐっち「……ワシに英語のこと訊くなって」
やのっち「付和雷同も知らんのんかいな。すぐに他人の意見に同調することやんか。四字熟語辞典持ちあるいてへんのん?」
かのっち「うわっ、選手名鑑以外に四字熟語辞典も持ちあるいてるんですか?矢野さん」
やのっち「ヒーローインタビューで、ちょっと四字熟語なんかを混ぜるとファンのポイント上がるんやで。例えば獅子奮迅とか因果応報とか……」
のぐっち「直球勝負、三者三振……」
かのっち「三番敬遠、四番勝負……」
やのっち「……」

のぐっち「そういえば『やのっちかのっち、時々のぐっち』のタイトル、えらいブーイングの嵐みたい」
かのっち「それって……」
のぐっち「そろそろ『やのっちのぐっち、時々かのっち』に改題してもいいんじゃないかって」
かのっち「“時々かのっち”って、そ、そんなあ(T T;)」
のぐっち「実情にあってるんじゃない?」
かのっち「のぐっさぁん〜」
やのっち「それなら、いっそ『やのっちと愉快な仲間たち』でどない?」
のぐっち「矢野さぁん〜」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜横浜バースデーズ〜 2007-7-1
●横浜ベイ1−5阪神○ (阪神6勝4敗)

横浜ベイスターズに連勝して関西に移動するタイガース。
試合後のロッカールームには、いつもの捕手三人が仲良く肩を並べて……。

かのっち「のぐっさん、上園とのコンビ、サイコーっす」
のぐっち「おお。すっかり上園の恋女房やのうワシ。あはは……」
かのっち「のぐっさん、ジャンとも恋女房ですしねえ」
のぐっち「ジャンの恋女房は止めてくれよ」
かのっち「あ、これは失敬しました。ジャンの場合、恋女房というより猛獣使いというほうが……」
のぐっち「なんてこというねん、お前。けどそれおかしいわー。アラスカのグリズリー(ヒグマ)想像してもうた」
かのっち「そうそうグリズリー、グリズリー。そんな映画ありましたね」
やのっち「君等、関東人やから知らんやろうけど、昔、毎日放送で『ヤンタン』いうラジオ番組の生本番中に鶴瓶が『グリズリーの○ンズリ』って口走って、しばらく謹慎くらいよってなあ。ぐひひひひ、これ可笑しかったなあ……(笑)」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「す、すまん。いまのは嶋田コーチには内緒やで(汗)」

かのっち「……そういやあ今日、広大の奴、バースデーヒット打ちやがったんですよね。くっそー」
のぐっち「桧山さんはバースデー三振か」
かのっち「のぐっさんもこの前バースデーホームラン打ちましたでしょ。何が悔しいって、僕なんか12月生まれだから、打ちたくてもバッターボックスに立てないんすよね12月には」
やのっち「そうそう、オレかて12月生まれやからその気持ちようわかるわ。若い頃から4月〜9月生まれの奴が妬ましい思うとったもんなあ」
かのっち「ほんと、一度でいいからバースデーなんとかいうやつを経験したいんですよ」
やのっち「誕生日に試合あると、ファンの子からもいろいろもらえたりするしなあ。俺等12月ちゅうたら契約更改で一番、ピリピリしてる時期やん。悲しいよなあ」
のぐっち「いっそ中南米のウインターリーグに行くとか……(笑)」
やのっち「藪さん、それでメキシコ行かはったんかなあ?」
かのっち「そんな隠された秘密があったとは」
のぐっち「そういやあ、うちの監督って誕生日はいつ?」
やのっち「あ、オレ選手名鑑もってるから調べてみよか」
かのっち「やのさん、そんなん持ち歩いてるんですか?」
やのっち「何いうてんねん。試合前には必ず相手チームにバースデー選手がいないかチェックするんやがな。で、バースデーの選手がバッターボックスに入ってきたら、聞こえるようにこう囁くねん。『今日のバースデーはあの娘と過ごすん?』。ま、独身の選手の場合、この一言でたいてい動揺しだすわな。妻帯者でも遠征先やと、突然、落ち着きなくしよる奴おるから、試してみる価値あるで」
かのっち「やのさんの偉大さを改めて知りましたでつ……」
のぐっち「ワシ、この前そんなこと囁かれたら間違いなく三振してましたw」
やのっち「ノムさんの教えよ。『バースデー選手をバッターボックスに迎えたときの囁き術 8か条』、オレが教えてもろたんはその中の3か条だけやったけどな。何せ1年に1個しか教えてくれへんひとやからなあ。で、岡田監督の誕生日はやなあ、11月の25日とあるなあ」
のぐっち「うわあ、日シリはおろかアジアカップですら終わってまっせ」
かのっち「ファン感、その日にやりましょうか。紅白戦すればどっちかのチームがきっと監督にバースデー白星プレゼントできますし(笑)」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜リターンズ〜 2007-6-16
●ロッテ7−11阪神○ (阪神1勝2敗)

奇跡の大逆転劇で沸き返るマリスタ。
試合後のロッカールームにて。
久しぶりに捕手三人が仲良く肩を並べて……。

やのっち「まさか勝てるとは思わんかったよなあ」
かのっち「矢野さんの復帰を祝う一勝ってとこですかねえ」
のぐっち「そんな歯の浮くフレーズが平気で言える君には感心するなあ(笑)」
やのっち「今日は全員の勝利やで」
かのっち「全員言いますと途中交代の矢野さんや、ベンチの秀太さん、のぐっさんも含まれるんですか?」
のぐっち「そんなトゲのあるフレーズが平気で言える君には感心するなあ(笑)」
やのっち「いや、今日のオレはダメダシされても仕方ないからなあ」
かのっち「『ツーアウトからの失点はキャッチャーの責任や』って監督、いつも僕等に吠えたはりますからねえ」
のぐっち「あれ、カチンとくるよなあ。これやから野手出身の監督はやっとれんのよなあ」
やのっち「四回、五回の失点はどっちもツーアウトランナーなしからやったからなあ……」
かのっち「矢野さんのリードは間違いとは言いきれませんよ」
やのっち「ハシケンがチェンジアップ打たれた二発はオレの配球ミスや」
かのっち「矢野さんのリードは自殺行為ですよ」
のぐっち「ホンマ、おまえ二重人格やなあ」
やのっち「そういやあ九回、ジブンほんまよう打ったなあ」
かのっち「でしょ。片手でセンター返し見てくれました?」
のぐっち「なんちゅうても、その前のコーダイのライトフェンス直撃が効いたよなあ」
やのっち「小林雅から打ったんやからすごいよなあ。これから右投手でも先発いけんちゃうか?」
かのっち「本人、このところ溜まってたみたいっすからねえ。この前も『オレを差し置いて何で一割台のDHやねんムニャムニャ……』てな寝言を言うてましたから」
のぐっち「めっちゃ過激すぎるやん(汗)。今度、バス移動の時、絶対にコーダイ寝かしたらあかんぞ。寝そうになったら耳元でPL学園の校歌歌ったれ」
かのっち「分かってます。任せといて下さい」
やのっち「おっ、向うのほうから浅井がこっちに歩いてきたで」
かのっち「なんつっても浅井さん、俊敏で足があるし……」
のぐっち「肩も結構つよいし……」
やのっち「打撃もパンチ力あるよってに。つまり……」
のぐっち「絶対、外野手向きやよなあ」
(全員)「うんうんそうそう外野外野天職天職……」


あさっち「んー、皆どうしたの?一斉にこっち向いてニヤニヤしちゃって……」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
やのっちかのっち、時々のぐっち 〜雨中徘徊〜 2007-5-16
○広島6−1阪神● (阪神2勝8敗)

米子遠征。
昨日に続けてカープに敗れた夜、試合後のロッカールームにて。
捕手三人が仲良く肩を並べて……。

やのっち「♪小ぬか雨降る御堂筋……」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「♪心変わりな夜の雨 ……」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「あー、もしかしてジブンら欧陽菲菲、知らんかったりして」
かのっち「いえ、聞いたことあります」
のぐっち「よく覚えてます」
やのっち「あーよかった。知らん言われたら淋しいもんがあるよなあ(笑)」
かのっち「へーくしょん」
やのっち「あ、ジブン、しっかり拭いとかな風邪ひくで」
のぐっち「ひっくしょん」
やのっち「ジブンも気いつけや。一番、よう濡れてたもんなあ」
かのっち「矢野さん、全く濡れてませんねえ」
やのっち「ぁぁ……」
かのっち「……(汗)」
のぐっち「……(汗)」


やのっち「♪はぁなつぁー はぁなつぁは何処よ……」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「ここ、“あなた”ちゃう。“はぁなつぁ”なんやで。この歌、ここがポイントなんや」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「“雨の御堂筋”、海の向こうじゃ“雨中徘徊”ちゅうんやて。笑わっしょんなあ(笑)」
かのっち「……」
のぐっち「……」
かのっち「また、バッテリーミスの失点。明日の新聞で叩かれますかねえ」
のぐっち「僕も痛いところでパスボールしましたからねえ」
やのっち「あのコンディションや。無理ないよ。オレなら止めてたけど」
かのっち「……」
のぐっち「……」
やのっち「ジブンら、ここ突っ込むとこやん(笑)」
かのっち「無理っす」
のぐっち「あっ、嶋田コーチが血相変えて、こっちのほうに向かってます」
やのっち「ヤバイ。『おい三人。監督からお呼びがかかったから監督室に来い!』ちゅうんちゃうん(汗)」
かのっち「マジっすか?」

しまだ「おい三人。監督、えらいお怒りやで」
かのっち「あちゃ……」
しまだ「監督からお呼びがかかる前に、はよう抜け出してメシ行こか」

| いわほー | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |