『妄虎千夜一夜物語』

 「妄想は忘れた頃にやってくる」
 「助っ人は忘れたほうが丁度いい」
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シーズンが開幕して、リアルなタイガースの前にしばし妄想は霞んでしまうようです。 でも、そんな時も“妄想菌”はしっかり養分を蓄えているのです。いずれ訪れるかもしれない湿りっぱなしの季節に備えて、じわりじわりと……。

〜妄虎千夜一夜委員会〜

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夢十夜 第五夜 〜ぐるぐるまわし〜
こんな夢を見た。

3畳ほどの小さい部屋。
スチール製の素っ気ない机の前に座っている。
ここはどこなんだろう?

やがて男が一人、二段重ねにした大きな段ボール箱を抱えて入ってきた。
無言で、その箱を机の上に
ぽん、
と置く。
「君へのメッセージが入っている」
男はそう言った。
どこかで聞いたことがある、
ふと、そう思ったが、誰の声なのかは思い出せなかった。
「全部読むんだ。読み終えたらあれで連絡してくれ」
男が指さす方向を見ると、入口のすぐ脇の壁に、小さなインターホンがかかっている。
ああ、ここは昔カラオケボックスだったんだな。
そんなことだけはすぐに理解できる。

いつの間にか、男は姿を消していた。
段ボールに目をやる。
中に何が入っているのか、わかっている。
いま、一番読みたくないものだ。
しかし、読まないわけにはいかない。
そうしなければ、きっとこの夢は覚めないんだろう。
そんなことも、理解できる。

そろそろと、目の前の箱を一つ、開けてみる。
中には、電子メールをアウトプットしたものが、整然と詰められていた。
一束とりだして、渋々、目を通し始めた。

「今年はぜひ盗塁王を取り返してください!」
「首位打者、最多安打、盗塁王の三冠、期待してます!」
「まだまだやれます!もっともっと頑張ってほしい!」
「後輩が追い上げてきてますよ!ケガになんか負けるな!」
「体の小さい僕には究極の目標です!」
「頑張ってください!」
「頑張れ 頑張れ 頼む頑張れ 頑張ってくれ」

頑張れ、期待、希望、復活、負けるな、ぜひとも、なんとしても……。

前向きな言葉の洪水。

何なんだいったい。
自分は今まで、全然頑張ってなかったんだろうか。
頑張りが足りなかったんだろうか。
どうすれば、どんなことをすれば、頑張ったことになるんだろうか。

間断なく、ガンバレの波が押し寄せてくる。

頑張れガンバレがんばれ負けるなまけるなマケルナ期待きたいキタイ是非ぜひゼヒ何とかなんとかナントカ頑張れガンバレがんばれ負けるなまけるなマケルナ期待きたいキタイ是非ぜひゼヒ何とかなんとかナントカぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。

ぐるぐる。

ぐるぐる。

……背中の荷物を捨てるためにここに来た得体の知れないそれはかつて自分を奮い立たせてくれたものしかし今は…………。ただただ、重荷になるだけのもの。
リュックを下ろして中にびっしりと詰まったそれを一つ取り出してみる以前は黄金色の目映い光を放っていたそれは今では…………。獣の臓物のように赤黒く彩られている鈍い光沢が不自然なほどにつやつやつやつやと。

吐き気がする。

リュックを逆さまにして振るとそれが大量に転がり出てきたアア気分がいいぞ最高だあははははははははははははHHHHH……。

むなしさが一つ、ぽつねんと。

しばらくするとさっきまき散らしたはずのそれが再び自分のところへ集まり始めたそれだけではないぐるぐると渦を巻きながら舞い上がってきたのだまるで。
逃れることはできないんだとでも言いたげに自分の体を覆ってくるアア外からはもう自分の姿は見えないんだろうなあ。
小さいからなあ。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

ぐるぐる。

ぐるぐる。


「どうした。まだ読み始めたばかりじゃないか」
――もういいです。もうたくさんです。
「もういいって?ファンの期待には応えられないというのか?」
――いや、そうじゃない。ああ、でも。そうかもしれないです。
「じゃあ、どうしたいんだ。もっと伸び伸び野球がしたいか?何にも囚われずに」
――ああ、そうですね。
「そうか。ならメキシコに来るか?」
――メキシコ?
「決して満足な報酬は得られないが、みんな野球を楽しんでるよ。選手も、そしてファンも」
――そうなんですか。少し考えさせてください。
「良い返事を待ってるよ。じゃあ」

ぱたん。

たぶん、自分はメキシコに行かないだろう。
そして、あの男も自分がメキシコに行かないことをわかっているのだろう。

少しだけ、気分が良くなったような自分を、演じてみる。
少しだけ、気持ちが晴れたような自分を、意識してみる。






新しい朝がきた。希望の朝だ。喜びに胸を開け青空仰げ。






おはよう。


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