『妄虎千夜一夜物語』

 「妄想は忘れた頃にやってくる」
 「助っ人は忘れたほうが丁度いい」
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シーズンが開幕して、リアルなタイガースの前にしばし妄想は霞んでしまうようです。 でも、そんな時も“妄想菌”はしっかり養分を蓄えているのです。いずれ訪れるかもしれない湿りっぱなしの季節に備えて、じわりじわりと……。

〜妄虎千夜一夜委員会〜

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夢十夜 第九夜 〜B面のメドレー〜
こんな夢を見た。

赤ん坊を抱いている。さっきから泣いたっきり。
ほとほと困り果てた。
えーい、やけくそや。
ビービー言うたままの赤ん坊の耳元で、
「4番サード掛布」と、
囁いてみる。
するとどうだ。ぴたりと泣きやんではないか。
それだけではない。満面の笑みさえ浮かべている。
雲一つない晴天。洋々たる前途。拓かれた未来。
そんな甘美な言葉の響きが、こんな小さい赤ん坊にも伝わるのだ。

                  ◇

念願叶って、新聞記者になった。
初仕事は、故障で調子の上がらない安藤への取材。
意外にも、その表情は明るかった。
何も聞いていないのに、安藤は勝手にしゃべり出した。
「小学生のときにね、クラスの女の子が寝違えたとかで、首を右にかしげたまま学校に来たんだ」
「その仕草がかわいくて。ところが次の日、俺も寝違えたんだよ。わざとじゃないよ。たまたま」
「学校へ行くと、彼女の首もまだ曲がったまま。ふたり仲良く首をクイッと」
「友だちからさんざん冷やかされたよ。アイツの真似してるんか。優也、オマエ好きなんか?って」
「それで、初めて気付いたんだ。俺、あの子のことが好きなんだなって」
「今、右足をケガしてるだろ。そのときのことを思い出してさあ」
「あ、俺、もしかしてあの人のことが好きなん……」
気がつくと、駆けだしていた。
こんな話を聞かされるために、僕は新聞記者になったわけじゃない。

                  ◇

それにしても、宵っ張りな赤ん坊だ。
一向に眠る気配がない。
そや…。
ふと思いついて、耳元で、
「4番ライト岡田」と、囁いてみた。
瞬く間に眠りについた、と思ったが、
どうやら気絶してしまったらしい。
どんよりとした曇天。見通しのまったく利かない漆黒の闇。
そんな寛美な言葉の響きさえ、この子はわかっているのだ。

                  ◇

銀行へ行くと、
「カードを取ってお待ちください」
と言われた。
43番。
ところが、一向に、自分の番号が呼ばれない。
窓口では、すでに60番台がコールされている。
忘れられてしまっているのだろうか。
43番のカードを握りしめたまま、僕は呆然と立ち尽くす。
隣では、44番のカードを持ったおじさんが、
半ば諦めたような雰囲気を漂わせて立っていた。

                  ◇

翌朝、起きるなり元気に泣き出した赤ん坊に、
「4番サード今岡」
と囁いてみた。
ピタリと泣きやんだかと思うと、
「フン」
と一つ、鼻で笑い、再び寝息を立て始めた。


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