『妄虎千夜一夜物語』

 「妄想は忘れた頃にやってくる」
 「助っ人は忘れたほうが丁度いい」
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シーズンが開幕して、リアルなタイガースの前にしばし妄想は霞んでしまうようです。 でも、そんな時も“妄想菌”はしっかり養分を蓄えているのです。いずれ訪れるかもしれない湿りっぱなしの季節に備えて、じわりじわりと……。

〜妄虎千夜一夜委員会〜

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タイガース都市伝説(2) 『俺が見ると…』
■ 伝説その2 『俺が見ると…』

「ああ、もう見てられへん!」
彼はそう叫ぶと、チャンネルをいつものようにNHK教育へ変えた。
「ちょっとー、またあ?」
私は、これまたいつものように不満の声をあげた。
「アホ、あんなピンチ見てられるか」
「私は見れるもん。下さんが投げてんのに…」
「下さんやから怖いんじゃ。これで鳥谷がエラーなんかしてみい。荒れ狂いよるわ」
「別にあなたに害はないやんか」
「まあ、そうやけど…」
「だから早く戻してよ」
「あかんあかん、バッター谷繁やないか。あいつは…」
「はいはい分かってます。『あいつは阪神戦になると目の色変えよる』でしょ」
「そや」

彼はいつもこうだ。
阪神投手陣がランナーを出すと、とたんにそわそわし始める。
二人以上出るともうダメ。ワーキャー言いながらチャンネルを変えてしまう。
変える先がいつもNHK教育なのは、「そのまま番組を見続ける心配がないから」。
以前は適当にチャンネルを合わせていたらしいのだが、
一度「鉄腕DASH2時間スペシャル」をついつい最後まで見てしまった「前科」があるため、
それ以来、「ピンチの時はNHK教育」と決めているそうだ。
「アホちゃうか」と思うのだが、彼は至って真剣である。

「そろそろええんちゃうかな」
しばらくすると、そう言って彼はチャンネルを元に戻す。
CMになっていれば、ピンチを切り抜けたということ。
しかし画面はまだ、下柳がセットポジションに入るところを映し出していた。
目にも止まらぬ速さで再びNHK教育へ。

「もう、いい加減してよ。目ェつぶっといたらええやんか」
「アホ、音聞こえるがな」

普段の彼は、少々のことでは動じない、冷静沈着な人だ。
職場の同僚である私は、彼のそんなところに惹かれた。
ところが阪神の試合となると、とたんに冷静さを失う。
ちなみに、野球に興味がなかった私が阪神ファンになったのは、
デートのときでも阪神の話しかしない彼の影響だ。
ただ、彼とは一度も試合を見に行ったことはない。
「俺が見に行くと負けるから」というのが理由である。

結局、この日は阪神が3対1で勝った。
しかし、まともにテレビで観戦できたのは、試合時間の半分にも満たなかった。
投手陣が毎回のようにピンチを背負ったことに加えて、
金本の3ラン以外、まったく淡泊な攻撃だったことも原因だ。
それでも、阪神が勝利したことに、彼は満足そうだった。
「なあ、俺が見いひんかった方がうまいこといくんや」
情けない、と思うのだが、彼に言わせると、
「暗黒時代を知ってる阪神ファンは、だいたいこんなもん」なのだそうである。
本当かしら。

翌日は、珍しく二人そろって職場を出ることができたので、
彼の車で一緒に帰宅することにした。
駐車場へ向かった彼より一足先に家へ戻った私は、
玄関に入るやいなや、家の中の空気がいつもと違うことを感じた。

誰かいる――。

明かりはつけない方がいい。
そう思い、玄関でしばらくじっとして暗闇に目を慣らすことにした。
……よし。
万が一のことを考え、スニーカーを履いたまま、ゆっくりと廊下を歩いていき、
リビングへと続く扉をそっと開けた。
中へ入ろうとしたその瞬間、
部屋の奥の方から、大きな黒い影がこちらへ向かって突進してくるのが見えた。

やっぱり――。

一歩下がって身構えたそのとき、
廊下の電気がパッとついたかと思うと、一瞬の間があって、再び消えた。
少し、混乱した。
相手は二人なのか――。
               
「アンタここどこやと思てんねん!警察官の家やで!」
闇雲に突っ込んできた男を払い腰で投げ飛ばし、
袈裟固めに組み伏せると、私は、男の耳元でそう一喝してやった。
大きいと思っていた男は、意外なほどに小さく、細かった。
それでも、女の私の力では、必死で暴れる男を押さえつけるだけで精一杯だ。
さらに、この男には相棒がいるかもしれない。
この状態でもう一人を相手にするのはとうてい無理である。
早く彼に戻ってきてもらわなければ。

そのとき、廊下の電気が再び点灯した。

玄関の方へ目をやると、そこには、半開きの玄関に身を屈めて、
恐る恐る片目だけこちらに向けて覗き込む彼の姿があった。

彼は、私の視線に気付くとすっくと立ち上がり、こう言い放った。
「おお、大丈夫やったか。ほらな、俺が見ない方がうまいこといくやろ?」
はあ?
「電気つけたらお前が格闘してる姿が見えたからな、これは見んほうがええと思て消したんや」
| 喜八 | 妄想 | comments(1) | trackbacks(1) |
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バタ (2007/03/24 1:04 PM)
>「なあ、俺が見いひんかった方がうまいこといくんや」

なんか涙がでてきた・・・。









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| - | 2009/07/29 2:51 PM |