『妄虎千夜一夜物語』

 「妄想は忘れた頃にやってくる」
 「助っ人は忘れたほうが丁度いい」
<< April 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
Notice
シーズンが開幕して、リアルなタイガースの前にしばし妄想は霞んでしまうようです。 でも、そんな時も“妄想菌”はしっかり養分を蓄えているのです。いずれ訪れるかもしれない湿りっぱなしの季節に備えて、じわりじわりと……。

〜妄虎千夜一夜委員会〜

↓ご来館の足跡に赤ポチッと!
blogranking
Special Contents
Selected Entries
Recent Comment
Categories
Archives
<< 『THE 監督室』 | main | ケンちゃん >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | - | - |
メグミ
メグミはその日
初めて店を休んだ

スモーキィマウンテンで生まれた
私にとってメグミというのは
もちろん本名ではない

この国に来た時
メグミというのは「ギヴン ビューティ」という意味だと
同じスモーキィマウンテン生まれのママさんが教えてくれた

この国に来てから5年
数え切れない男が愛の言葉を囁き
そして身体の上を通り抜けていった

その度に傷付き
その度に裏切られ
メグミの心には
かさぶたのようなものだけが残されていった

だけどナカモトサンだけは
一度だってメグミを傷付けたりしなかった
一度だってメグミに嘘をつかなかった

いつもお店の同じ席に座って
ウーロンチャを飲みながらニコニコ笑っていた

愛してるなんて言葉を
かけることはなかったけれど
それでもメグミは愛されていると感じることが出来た

あの日
阪急西中島駅の踏切の前で
「イッショニ クラシタイ」と言ったメグミに
いつもよりほんの少し困った顔で
笑っていたナカモトサン

それがメグミの見た
ナカモトサンの最後の笑顔だった

その日を境に
店に来なくなったナカモトサン

裏切られた思いと
悔しくさとやりきれなさで
携帯電話の番号を押した

電話に出たのはナカモトさんではなく
ナカモトサンのお母さんだった

ナカモトサンが工事現場の事故で亡くなったと言った

あれから2ヶ月
人間は本当に悲しい時は涙なんて出ないのだと知り
それからもメグミは毎日店に出続けた

けれど今日
どうしてもナカモトサンが大好きだった
ハンシンタイガースの野球が見たくて
TVを見るために店を休んだ

生まれて初めて見る野球は
どちらが勝ってるのかさえもわからなかったけれど

いつもナカモトさんが話してくれた
アカホシという選手が画面に映った時
自分でも信じられないぐらいの涙があふれた

ゴメンネ ナカモトサン
ワガママばかり言ってゴメンナサイ
アリガトウネ ほんとうにアリガトウネ
メグミと出会ってくれてアリガトウネ

アリガトウネ


TVを消し
店に出る身支度を始めた

ハンシンタイガースを見て
アカホシを見て
もういちど
この国で生きていこうと決めた

アパートを出て
大原簿記の門を曲がり
線路沿いを歩く

梅田発京都行き特急電車の行き過ぎる風が
メグミの髪を優しく撫でた
ナカモトサンの手と同じだとメグミは思った
| Ryuhey | 妄想 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | - | - |
コメントを投稿する









url: http://mouko1001.jugem.jp/trackback/33